冥府

日本陸軍 第二師団 歩兵第十六連隊 新発田 あやめ会 戦記 戦死者名簿 ガダルカナル 雲南 ビルマ ジャワ ノモンハン 遺骨収集 政府派遣

冥府の戦友と語る

自著解題

冥府と娑婆を繋いだこの手記を現代に生きる人はどのようにうけとめてくれるだろうか。
私の一番知りたいところである。
国家民族が生き抜くために思想、信条、宗教を越えて身命を賭してひたすらに戦場を駆け苦難を共にした実録を記したものである。

小説や創作ではない。
日本が局面をした明示維新後特に大正初期から昭和中期にかけて国家の施策、軍事、経済問題等を背景として国家が当面した事件、事変、戦争は約十五年続いた。
これが為、新発田旧・歩兵第十六連隊は全期間、全域に亘り前線に立った。
六千余名の人達は二十歳代の尊い命を永劫の決別をして冥府に旅立った。

私は奇しくも余命を保ち八十六歳(現九十四歳)の老齢を永らえた。
幽明境を異にしたとは云っても私は常時冥府の門前に立って声をかけていると信じ生甲斐として参った。
事毎に戦友(とも)の若い顔が蘇って来た。
しかし二十世紀の幕は閉じ新世紀と共に人々の心も社会も変貌した。
人の評価は棺の蓋をしめてはじめて定まるというが、あなた方の遺した業績は二十一世紀に資する多くの指針を与えてくれました。

決して無駄とはならない、この世に生きていることを確信しています。
以上を本書の結びとして擱筆をする。




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